#17 TEAM NACS「PLAMUSHIR〜信じ続けた士魂の旗を掲げて〜」から辿る北海道の歴史
前回のテーマは第七師団について書きました。
今回は、帝国陸軍の戦車隊第11大隊のお話で2018年にTEAM NACSさんが全国ツアーを開催した演劇、「PALAMUSHIR〜信じ続けた士魂の旗を掲げて〜」をリレーしていきます。
TEAM NACSさん、北海道民なら誰もが愛してやまない存在です。
地元テレビでの暴れっぷりといったらw
今では、「日本一、チケットを取れない劇団」とさえ言われています。
そんなTEAM NACSさんの「PALAMUSHIR~信じ続けた士魂の旗を掲げて~」
舞台は日本がポツダム宣言を受諾し停戦中の8月18日~21日の間にソ連の奇襲攻撃によって武装解除中だった日本軍との間で起こった戦闘、「占守島の戦い」のお話です。
PALAMUSHIR
皆さん、何て読むかわかりますか?
Js0nは、最初「パラムシャー」と読んでいましたw
この島の読み方は複数あるようで「パラムシル」「ポロムシル」「ホロムシロ」等と呼ぶそうです。
ロシアではパラムシルと呼ばれ、日本では漢字で「幌筵」と書くことから複数の呼ばれ方が存在するのでしょうね。
しかし、元を辿るとアイヌ語の「パラ(広い)・モシル(島)」「ポロ(大きい)・モシル(島)」などが由来とされていてこのこの千島列島にも「アイヌ」という存在がいたことがこの地域の地名にも影響しているのでしょう。
ここではパラムシルと幌筵の間をとって以下「ポロモシル」と呼びます✋
ポロモシルは千島列島にある島でカムチャッカ半島から2番目に近い、千島列島の中では大きな島です。先ほどの「ポロモシル(大きい島)」という地名も頷けると思います。
ポロモシル島の上、カムチャッカ半島に一番近い占守(しゅむしゅ)島。この島から物語は始まります。
占守島の戦い
アメリカとの戦闘に備えポロモシル島と占守島を要塞化していた日本軍にとってポツダム宣言受諾の「玉音放送」は正に、晴天の霹靂だったでしょう。
そんな中、ソ連軍が「日ソ中立条約」を一方的に破棄し対日参戦し占守島へと侵攻を開始した。
ソ連軍はこの進行で北海道本土までも手中に収めようとしていた。
3日間の戦闘は、日本軍優勢で推移したが軍命により日本軍が降伏し停戦、多くの日本兵がシベリアへ拘留されました。
士魂部隊
TEAM NACSが演じる「士魂部隊」
「士魂部隊」とは、当時、満州から転進した精鋭部隊「戦車第11連隊」のことで
「11」を漢数字にすると十と_で「士」と呼んだのが由来。この占守島の戦いで圧倒的劣勢の中、日本軍以上にソ連軍に損害を与えた勇姿を継承すべく現在でも恵庭に駐屯する「第11戦車隊」が「士魂マーク」を継承しています。
士魂部隊の戦果
引用「特大発動艇+戦車第11連隊 - 艦隊これくしょん -艦これ- 攻略 Wiki*」
武装解除の命を受け撤退準備中の状況ではあった士魂部隊にとって、もうすぐ戦争が終わり、祖国に戻れるという期待の中でのこの戦闘は何とも言えない複雑な心情があったことが容易に想像できます。
軍命により、戦闘も「自衛の為の戦闘」のみに限定されていたが、その期限も18日午後4時まで。
18日午後2時・・・これを待っていたかのようなソ連軍の奇襲・・・
だが、士魂部隊にとってこの戦いには「大義名分」があった。
ポロモシル島には、缶詰工場などで働く多くの女工員や民間人がいた。
「もし、このまま降伏したら?」
女工員や民間人たちの行く末を案じ、そして北海道本土にいる家族たちを守る為、身を挺して武装解除という軍命に抗い、ソ連軍に抵抗したのです。
士魂部隊が徹底抗戦している間に女工員や民間人たちを北海道本土へと26隻の船で移送し、1隻を除いた25隻を帰還させました。(一隻は難破しソ連軍に収容)
停戦
3日間の戦闘は、停戦交渉が難航し21日、軍命により日本軍が降伏し停戦が成立した。
占守島の戦いで
◎ソ連軍側の推定値
・日本軍の死者 1000名
・ソ連軍の死者 1567名
◎日本軍側の推定値
・日本軍の死者 600名
・ソ連軍の死者 3000名
と両軍の数値に乖離はあるが、劣勢の中、日本軍がソ連軍に与えた損害がいかに大きいかがわかる。
ソ連人民にとって8月19日は「悲しみの日」と言われ、ソ連の司令官は後に、「甚大な犠牲に見合わない、全く無駄な作戦だった。」と回願録を残したとされているが定かではない。
最後に
引用「占守島に打ち捨てられた残骸=2017年7月(第11戦車隊士魂協力会提供) | 千島列島, 歴史教育, 米軍」
ポツダム宣言受諾から終戦準備中の空白の期間に起こった「占守島の戦い」。
教科書にも載っていない忘れられた戦いを一体、どれだけの人が知っていたでしょうか?
また占守島の戦いだけではなく、ソ連軍による南樺太への侵攻で4000人もの民間人が犠牲になっており、「女性たちの集団自決」という痛ましい出来事があったと言われています。
この実話を「演劇」として演じたTEAM NACSさん。DVD(特典付き版)ではこの悲惨な実話を演じることに対しての戸惑いや葛藤が収録されています。
NACSの皆さんにとっては、新しい挑戦だったのではないでしょうか?
普段は、コミカルで面白いイメージが強いですがこの演劇ではそのイメージを裏切るとてもシリアスな迫真の演技を観ることができます。
この戦争はノンフィクションですが
「限りなくノンフィクションに近い
フィクション」に仕上がっています。
※2022年3月22日追記
現在、ロシアによるクリミア侵攻が世界的な問題になっています。
現在クリミアで起きていることは、この第2次世界大戦時代の「PALAMUSHIR」で起きたことと全く変わらないことが起きているのです。
決して対岸の火事ではないことをこの「PALAMUSHIR」を通して多くの人が
今起きていること
これからの日本のこと
これからの世界のこと
これからのあるべき未来のこと
人間のあるべき姿を
真剣に考えるきっかけになればと願って止みません。